歯周病を薬で治そうという試みは古くからなされてきました。
でも、特効薬はなく薬のみで治すのは不可能です。
歯肉炎、歯周炎ともに治療の基本は原因の除去、すなわち歯ブラシを用いた口腔清掃や専用の機器(スケーラー)を用いたスケーリング(歯石除去)等の物理的な清掃が基本であり、薬物療法はあくまでも補助的なものとお考えください。
歯周治療に用いられる薬物は使用法の面から局所に用いるものと全身的(服用など)に用いるものに分けられます。いずれの薬物も副作用を考慮することが大切で、とくに長期の使用には注意を要します。
■歯周治療の消毒剤
主にうがい薬を用い、歯肉と歯のすきま(歯周ポケット)や歯肉表面などの細菌を殺したり増殖を防ぎ、歯肉の炎症を改善する目的で用いられます。
さらにプラーク(歯垢)の抑制にも用いられます。しかしこれらの薬物の効果には限界があり先に述べたように歯ブラシやスケーラーによる物理的清掃を優先させることが大切です。
現在ではおもに、歯肉が腫れたり痛みがあったりと急性の症状がある場合、歯周病治療の手術の前後に多く用いられています。
プラーク抑制剤として今のところ一番効果が確実とされているのはクロールヘキシジンですが、口腔粘膜に使用できる日本の濃度規制0.1%では効果がありません。0.12%の濃度があればプラーク形成を80%、歯肉炎を95%抑制できます。
クロールヘキシジンに次いで有効なのはリステリンという洗口剤です。プラーク形成を10%、歯肉炎を40〜50%抑制できます。リステリンにはアフタ(口内炎)形成の抑制作用もあります。ただ、リステリンは独特の刺激的な味がしますので個人的に好みが分かれるかもしれません。
■歯周治療での抗菌剤使用
歯周治療での抗菌剤使用としては、
1.局所的に用いる歯周ポケット内貼薬療法
2.内服(経口全身投与)
の二つがあります
1.局所的に用いる歯周ポケット内貼薬療法は、歯周ポケット内へ抗菌剤を挿入し、歯周ポケット内の有害な細菌を減少させて、歯周病を改善することを目的とした治療法です。
歯周ポケット内の細菌に対してとくに有効な(感受性の高い)抗菌剤(テトラサイクリン系)をポケット内に挿入し、除放性にして長時間高濃度を保ち(ドラッグ・デリバリー・システム)、有害菌を減少させる治療法です。現在用いられている局所療法剤としてはペリオクリン、ペリオフィール等があります。
この治療法は抗菌剤の全身投与に比べて副作用が少ない利点があります。局所投与を行うと、局所での薬物濃度は経口全身投与の100倍まで高めることができると言われています。
歯周ポケット内に直接抗菌剤を作用させるため投与する量が少なくてすみ、耐性菌の出現、腸内細菌への影響等の問題も起こりにくくなります。
適応症としては、歯肉が腫れたり痛みがあったりする急性期、有害な細菌がとくに多いと考えられる若年性歯周炎、さらに根の形態異常などにより物理的清掃が困難な部位、全身状態が悪く外科的な歯周治療が行えない患者などが考えられます。
2.歯周治療での抗菌剤使用(経口全身投与)では、急性期に歯周ポケット内に侵入した細菌を殺したり、手術時およびその後の細菌感染防止の目的で、種々の抗菌剤が用いられます。
とくにテトラサイクリン系が有効とされ、経過を観察しながら2〜4週間程度服用します。テトラサイクリンは血中からポケット内組織への移行がよく、血中濃度と同等の薬効濃度を維持でき、副作用も少ないようです。
ただ、日本ではこの内服薬の投与はあまり広くは行われてはいないようです。
日本での歯周治療での抗菌剤使用の主流は先に述べた局所的に用いる歯周ポケット内貼薬療法です。
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